Dossiri - Kamaeru

建築・都市・生活の領域に関する知識の体系化、技術に対する考察、書籍レビュー等

iPhone写真バックアップ戦略

基本的に、長期間保存する写真はJPEG 2000が良いと言われています(しかし、可逆圧縮の明示、劣化時の品質という点ではtiffも素晴らしいです)。pngは無圧縮だけれど破損に弱く、HEICについては規格が月日の流れに耐えることを目的としていないため将来的に開けなくなる可能性があるためです。

 

この一年、LivePhoto機能で写真を沢山撮影してきたのですが、デフォルト設定で保存してしまっていたため、これをheicからjpgに、そしてバックアップ用の規格に変換する作業が発生して困っています。

基本的に幾つかのバックアップの考え方があると思いますので、原則と実践について記事にしようかと思います。

 

■基本的な(ショートスパンでの)バックアップ

これは、iCloudが最も優れています。自動バックアップ、アクセスのしやすさ、ハード寿命によるデータ破損の可能性の低さを考えれば、クラウドに全依存したほうが短期的には便利であるように思われます。

しかし、それはApple製品を未来永劫使わなければいけないことを意味します。iCloud上の写真をバックアップ用のファイルとして書き出すプロセスは、クラウドを使うときの常ではありますが、個人にとってはあまりに莫大な通信量を必要とします。後戻りできないほど写真を溜めてしまってから、通信時間が長すぎてどうしようもなくハードベースのバックアップができなくなるのがオチです。

 

私は、基本的に、iCloudに自動でファイルを投げて自身の携帯から写真を自動で消去していく方針には不賛成です。なぜならば、そのシステムが破綻した時に手元に保証されるデータが限りなく少なく、また修復も不可能だからです。

 

■中期的なバックアップ

さて、ここで、自分が去年の春に撮った写真で色々試してみます。HEICとして撮影してしまった数々の写真の中期的なバックアップが目的となります。前半は、いろいろな方法でバックアップを試してみます。

最終的にはやはり.tifか.jp2にしなければならないですし、.jpgとして保管する場合、画質悪化についても気にしなければいけません。

 

iPhoneWindowsへの直接の「写真のインポート」

現状これは、ほぼ全ての写真が正常にインポートされません。(スクリーンショットなどは大丈夫)

以前からも、写真の向きがめちゃくちゃになるという欠点がありましたが、いよいよこの一年で使い物にならなくなりました。

ちなみに、他アプリで撮った写真は普通にインポートできました。どちらにせよこの方法によるインポートは「楽」である一方で、全ての写真のバックアップを一切保証しません。

 

iPhoneMacの写真.appの「読み込み」

写真アプリに読み込めるファイルがほとんどですが、99.96%の写真はうまく読み込めますが、たまに読み込めないファイルがあるのでそちらについてはクラウド経由の方法を使う必要があります。

写真アプリに取り込んだうえで、ファイル>書き出す>未編集のオリジナルを書き出す でLivePhotoをjpgとmovで保存できます。さらに、全てのjpgファイルを選択した状態でダブルクリックし、プレビューアプリで開いた状態で

全ての写真を選択し、ファイル>選択中のイメージを書き出す>オプション>フォーマットをJPEG-2000に、品質をロスレス最大にする→これでHDDに書き出すことで、簡単に長期品質確保のための写真データとして書き出すことができます。Windowsで作業を行うより遥かに手数の少ない確実な方法で全写真・動画をバックアップできます。

 

もしMacの写真アプリへの読み込みを利用できない場合、クラウドベースでの書き出しの方法が複数考えられます。次にこれを検討していきましょう。

 

iPhone→Onedrive→Windows,Mac

この場合、写真タイトルがかなり非明示的なルールに基づいて生成されます。また、 sRGBに色が調整されることになります。

問題なのは、ファイルが正常にアップロードされない時があることです。この場合、空のファイルとして認識されてしまいます。時間効率で考えると、この部分が酷すぎて実用的ではありません。

 

iPhoneDropboxWindows,Mac

この場合、色の表現が未調整のまま移行がなされます。撮影したカメラのメタ情報がデータの中に残るため、露出時間などが保有されます。そして、Onedrive経由よりはタイトルも管理がしやすい、日付時間ベースのタイトルとして移行できます。

 

iPhone→GoogleDrive→Windows,Mac

以上の試行錯誤の結果Dropboxでもう問題が解決されてしまったからこれ以上の検討は必要ないのですが、ここまできたらGoogleDriveの場合どうなるか興味がでてきました。

やってみた結果、OneDriveと同様に、メタデータの損失、タイトルの複雑化、sRGBへの色調整が発生していました。

こちらは、Dropboxが使えない特殊な状況でしか使わないですね。GooglePhotoも根本的には同様です。

 

普通の写真データの変換プロセスにおいては問題ないのですが、いままでのクラウドの方法における問題点を敢えて挙げるとすれば、Live写真の動画部分をバックアップできないことがあります。これについては、Live化したい写真を集約して一括選択→「ビデオとして保存」したうえでインポートすれば局所的に解決できますし、そうやってLive写真を取捨選択した方がいいと思います。どうせ、Live写真の写真部分を一つ一つ見ることなんて無いんだから、ムービー化した方が見返しやすいです。

 

JPEG-2000への変換について

根本的な問題として敢えて言うべきことが一つあります。

上で試行錯誤して比較してきたHEICの写真からjpeg-2000までの変換の道のりには、どれもこれも必ず中間ファイルとしてjpgを挟む必要があるんです。つまり、長期保存用のデータにしてはいるのですが、必ず画質の劣化が発生しているんですね。iPhoneMacのルートでさえも、書き出しプロセスでjpgを挟んでしまっています。本来ならこの中間ファイルはpngないしtiffでなければいけないんです。私はそこまで一回の圧縮による画質損失を重く見てないので妥協していますが、アーカイブとしての正確さと言う点では不十分なんですよね。

 

あと、最終OSがWindowsの場合、結局.jpg→.jp2のコンバータ方法があまりなく、非標準搭載のソフトないし簡易的なプログラムを使わなければいけないという問題にぶつかります。いつか改善されるとは思うのですが。

 

■長期的なバックアップ

ハードディスクには物理的限界があります。

SSDよりはデータ寿命の観点から丈夫なHDDですら、いつかは寿命が来てしまうものです。そのため、HDD2台を平行運用して、式年遷宮のごとく定期的にデータの移動を行う必要があります。

そして、長期的に考えると案外「プリントアウト」という選択肢も悪くはありません。その場合、退色性の低いインクと、紙寿命の長い印刷紙を使用することが重要になります。

 

■バックアップを終えて

 

過去の写真を振り返り、分類し、不要なものを捨てることは、自動バックアップをしているだけではつい忘れてしまいます。今回複数のバックアップルートを検討しながらも、その整理整頓ができたことには満足できました。

利便性には、いくつかの時間スケールがありますし、アクセスの高速性と保管の安全性が必ずしも両立するわけではなく、重要なのは 

・依存先をひとつにしないこと

・自分が確実だと思っている方法を完全に信用しないこと

だと思います。物理的なアーカイブですら、災害を前にしては無力なのですから。